核医学とは

核医学とは、ごく微量の放射線を放出する放射性同位元素(ラジオアイソトープ;RI)で標識された放射性医薬品を用いた様々な疾患の分子イメージングと分子標的治療を行う分野です。

分子イメージングは生体内の臓器や腫瘍(ターゲット)に特異的に集まる様々な小分子、蛋白、ペプチド、抗体等の分子プローブが存在します。ターゲットに特異的に集まる分子プローブにγ線等のイメージング用のRIで標識された放射性医薬品を体内に投与し、SPECT装置やPET装置で撮影することで、ターゲットの分布をイメージングし、定量することも出来ます。これにより、患者様の生体内の臓器や腫瘍の状態をオーダーメイドで可視化することが出来ます。

また、放射性医薬品を用いた分子標的治療はアイソトープ治療といわれています。世界中で古くから行われている比較的有害事象の少ない安全な治療です。使われる放射性医薬品もやはり、ターゲットに特異的に集まる分子プローブにα線やβ線等の飛程の短い放射線が出る治療用のRIを結合させたものです。これを体内に投与すると、ターゲットに集まった放射性医薬品から出るα線やβ線によって、直接ターゲットを攻撃し、周辺の正常臓器のダメージを最小限にすることが可能です。当院では良性疾患であればバセドウ病、悪性疾患では甲状腺癌、ある種の悪性リンパ腫、前立腺癌の骨転移等に対しての治療を行っています。

近年では、様々な癌に対して、Theranostics(治療であるtherapyと診断であるdiagnosisを融合した造語です)という新しい概念の診断と治療の融合法が注目を集めいています。対象となる癌に特異的な分子プローブを用いて、イメージング用のRIで標識した放射性医薬品にて癌のイメージングを行い、癌にプローブが集まり、かつ、重要臓器に集まっていないことを確認して、治療用のRIで標識した放射性医薬品を投与して、癌を治療するというような手法です。最近では癌の遺伝子解析によって得られた情報を元に最適な分子標的治療薬が選択される治療が発展していますが、遺伝子情報を元に個別化された癌の分子イメージングやアイソトープ治療の研究が世界中で行われています。

当グループでは、核医学診療を従来の画像診断や他の診療情報に組み合わせて、患者様個々のより最適な診療の一助になることを目指しています。

また、最新鋭の機器を導入して、機能画像・molecular imagingを推進し、アイソトープを使った治療も担当しています。

RIグループ研究タイトル

  • 心筋血流定量による虚血性心疾患のリスク層別化
  • 心筋血流定量を用いた心筋微小循環障害の解明
  • 心アミロイドーシスにおけるPYP-SPECT/CTを用いた定量による予後予測
  • ドーパミントランスポーターイメージングにおける新しい定量法の検討
  • 超高分解能PETによるてんかん焦点の検討
  • FDG-PETによる分化型甲状腺癌の予後予測