IVRとは

「IVR:アイ・ブイ・アール」は、今、注目されている「患者様にやさしい最先端治療」の一つです。IVRはX線透視像、血管造影像、US(超音波)像、またはCT像を見ながら、カテーテルと呼ばれる細い管や、針を用いて外科手術なしで、できるかぎり体に傷を残さずに病気を治療する画期的な方法です。つまった血管を広げたり、出血した血管をつめて止血したり、がんを死滅させたり、さまざまな治療を行います。手術を必要としないため、体への負担が少なく、病気の場所だけを正確に治療することができます。

 IVRを安全に実施するためには、高度な技術が要求されます。現在、IVRは放射線科医が中心となって行っています。放射線科医は画像をもとに診断し治療する仕事をしています。放射線科医が長年培ってきた能力・技術が、この新しい治療法にいかされています。このすぐれた治療法が、より安全に、より多くの医療機関で実施されることをめざして、IVR学会では、この治療法の専門医である「IVR専門医」の育成と認定が行われています。当院には3人のIVR専門医が在籍し、業務に携わっています。また、当院はIVR学会認定の専門医修練施設であり、若手IVR医師が日夜、修練に励んでいます。

診療内容

IVRは、血管系と非血管系の大きく2つに大別されます。血管系IVRには、腫瘍や出血、動脈瘤に対する塞栓術、悪性腫瘍に対する抗癌剤動注治療、静脈瘤の塞栓術、血管狭窄病変の拡張術や金属ステント留置術、血栓性血管閉塞の血栓溶解剤療法、血管内異物除去などが含まれ、非血管系IVRには、悪性腫瘍に対するラジオ波焼灼療法、各種病変に対する経皮的生検、膿瘍に対する経皮的ドレナージ、椎体形成術などが含まれます。当院の2008年度の診療実績は血管系IVR:600例と非血管系IVR:500例でした。症例や手技も多岐にわたっています。

Vascular IVR

IVRは、血管系と非血管系の大きく2つに大別される画像下治療です。当科では、ステントグラフト治療をはじめとした脈管疾患に対する血管系IVRのほか、外傷や産科出血に対する緊急塞栓術、腫瘍に対するIVR(Oncology IVR)など、多岐にわたる治療に対応しています。現在、2台のIVR-CT装置とバイプレーン装置を用いて、年間500例以上のカテーテル治療を行っています。医学生・研修医の見学希望にも、随時対応可能です。

  • 非血管系のイメージ画像
  • 非血管系のイメージ画像
  • カテーテル
  • 血流停止のイメージ

当科にて行っている主なVascular IVR手技

  • 診断のための血管造影
  • 術前出血予防や腹部内臓動脈瘤、血流変更などのための塞栓術
  • 外傷、喀血や産後出血、術後出血などに対する緊急塞栓術
  • 肝癌、頭頚部癌やその他の固形癌に対する動注化学(塞栓)療法
  • 動脈硬化性疾患や透析シャント不全に対する血管形成術
  • 大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術やエンドリークに対する二次治療
  • 血栓除去や血栓溶解療法(脳血管を除く)
  • 原発性アルドステロン症やホルモン産生腫瘍に対する刺激試験、サンプリング
  • その他(異物除去術、治療用金マーカー留置、止血ステントグラフトなど)

熊本大学病院は、IVR専門医修練施設に認定されています。若手医師・学生の教育にも力を入れており、カンファレンスと血管模型を用いた実技指導を毎週行っています。後期研修1年次は、診断、治療、IVR、核医学のローテートを行いますが、2年次以降にはIVRを中心とした修練プログラムや大学院進学を選択していただくことにも柔軟に対応しています。

主な先進的な研究への取り組み

  • 大動脈瘤ステントグラフト内挿後の成績に関する多施設共同研究
  • 胃静脈瘤や門脈圧亢進症に対する先駆的治療法の報告
  • 気管支動脈蔦状血管腫の血管造影所見と塞栓術の成績に関する研究
  • 腹部内臓動脈瘤に対する塞栓術
  • 肝切除術前門脈塞栓術におけるアプローチ経路の検討…など
  • 血管模型を用いた若手医師の実技指導の全体風景
  • 血管模型を用いた若手医師の実技指導の手元画像

血管模型を用いた若手医師の実技指導の風景

診療内容 (非血管系IVR)

非血管系IVRにおきましては主にIVR-CT装置(CTとX線透視の複合装置)を用いて年間500-600症例、2000年からの累計で約9000例の経皮的穿刺手技を行っています。主に超音波でアプローチ困難な臓器や病変を対象とし、具体的には肺や縦隔、深部臓器およびリンパ節、骨軟部領域の生検を各専門診療科や中核病院からの依頼で実施し、その手技成功率は100%、生検における正診率は98%を誇ります。近年、組織検体での癌遺伝子や免疫解析の需要が高まりその組織解析の根幹を為す経皮的生検も更に重要性が増している領域です。腫瘍に対する治療的手技としては肝癌および肺癌に対する経皮的ラジオ波焼灼術(RFA)および腎癌に対する経皮的腎凍結療法といった経皮的アブレーション治療を併せて年間約30-50例程度実施しています。一般的にこれらのアブレーション治療の局所制御率は約90%とされますが当施設では血管系IVRの動脈塞栓術との併用により100%の局所制御を達成しています。その他 膿瘍や気胸に対する経皮的ドレナージ術、移植肝における胆管穿刺術、呼吸器外科手術前の小型肺病変に対するマーキング術、圧迫骨折ないし転移性骨腫瘍に対する経皮的椎体形成術など多彩な経皮的穿刺手技を実施しかつ安全かつ良好な治療実績を達成しております。

  1. 1肺癌に対するCTガイド下経皮的ラジオ波焼灼術
  2. 2腎癌に対するTAE併用CTガイド下経皮的腎凍結療法
  3. 3肺小型病変に対するVATS術前経皮的リピオドールマーキング術
  • 食道奇静脈陥凹部の小肺結節に対するCT ガイド下経皮的肺生検(肺過誤腫)

    食道奇静脈陥凹部の小肺結節に対するCT ガイド下経皮的肺生検(肺過誤腫)

  • 病的圧迫骨折(転移性骨腫瘍)に対する CT/X線透視下経皮的生検

    病的圧迫骨折(転移性骨腫瘍)に対する CT/X線透視下経皮的生検

  • 尾状葉HCCに対するCTガイド下経皮的(経胸腔的)RFA

    尾状葉HCCに対するCTガイド下経皮的(経胸腔的)RFA

  • 低腎機能患者|小型腎癌に対するCTガイド 下経皮的腎凍結療法

    低腎機能患者/小型腎癌に対するCTガイド 下経皮的腎凍結療法